昨日の今日

KINOUNOKYOU

お笑いとテレビと映画と本と音楽とサッカーと…

MOVIE

ヨルゴス・ランティモス『哀れなるものたち』

人類は進歩できるのか 西洋哲学的価値観を内包するこの科白は、本作で何度も問いかけられる。そして、それを体現するかのように、ベラ・バクスター(エマ・ストーン)は、問答を行う哲学者のように他者と出会う旅に出るのだった。異なる価値観に触れ、自らを…

マット・ジョンソン『ブラックベリー』

In many ways, they’ll miss the good old daysSomeday, someday Yeah, it hurts to say, but I want you to staySometimes, sometimes When we was young, oh man, did we have funAlways, always The Strokes『Someday』 サーバーを介した通信技術によって…

ルカ・グァダニーノ『ボーンズ アンド オール』

「俺のことを食べて欲しい…」とリー(ティモシー・シャラメ )がマレン(テイラー・ラッセル)に死の間際で囁くとき、それが単なる人肉嗜食を越えた情愛のモチーフになっていることを感じ取るのが難しくないのは、死者を喰らうことによって生の回復を目指し…

松本優作×東出昌大『Winny』

サーバーを介さずにコンピュータ間で通信することができるP2P技術を応用したファイル共有ソフトウェア、「Winny」を開発した金子勇(東出昌大)。著作権概念の更新の必要性やソフトウェアの脆弱性などを認識していたものの、ソフトウェアを2ちゃんねるに公開…

MY BEST MOVIES 2022

1.ジョセフ・コシンスキー『トップガン マーヴェリック』 Top Gun: Maverick | NEW Official Trailer (2022 Movie) - Tom Cruise - YouTube 2.デヴィッド・ロウリー『グリーン・ナイト』 The Green Knight | Official Trailer HD | A24 - YouTube 3.井上雄彦…

高橋名月『左様なら今晩は』

今となっては唯一、外の世界と繋がれる場所じゃけえ 同棲していた恋人に振られた陽平(萩原利久)の部屋に、突如現れた幽霊・愛助(久保史緒里)はベランダのことをそう定義する。部屋から出ることのできない愛助だけれど、ベランダは部屋の一部であり、唯一…

石川慶『ある男』

ファーストカットに映し出され、ラストシーンにも登場するルネ・マグリット『複製禁止』。この絵画はシュルレアリムの大パトロンでもあったエドワード・ジェームズの疎外感をマグリットが描き出したものであるらしい*1。鏡の前に立てば、自分自身の正面から…

松居大悟『ちょっと思い出しただけ』

どこかに行きたいなあ…と思うけど、どこに行ったらいいかわかんないじゃないですかまあ、だからお客さんに行き先決めてもらってそこに向かい続けるのは、ずっとどこかに向かっている気がして楽しいですね タクシー運転手の葉(伊藤沙莉)は日々、いろんな人…

マイク・ミルズ『カモン カモン』

『20センチュリー・ウーマン』(2016)からおよそ5年、マイク・ミルズは新作『カモン カモン』で主人公にホアキン・フェニックスをスクリーンに映し出すことを決めた。『ジョーカー』(2019)の次に出演する作品を慎重に選んでいたというホアキンにとって、…

常間地裕『この日々が凪いだら』

人身事故を知らせるアナウンスを聞いたとき、私たちは電車が遅れてしまうことを考えるのだろうか。人が死に、その存在がこの世界から消えゆくときに、その消えゆく誰かのことを考え、誰かは悲しみ、怒り、笑っているのだろうか。そうすることで存在させてあ…

前田弘二『まともじゃないのは君も一緒』

漫才である。相手が話せばそれに疑問を持ち、ツッコミをする。また話せば問い返す。会話の応酬に次ぐ応酬。間髪入れずにテンポ良く入り乱れる言葉、言葉、言葉。まさに、しゃべくり漫才映画である。冒頭、女子高生5人による井戸端会議は今年、2021年の『M-1…

斎藤久志『草の響き』

2021年の傑作である。佐藤泰志による原作、そして東出昌大3年ぶりの主演作である本作『草の響き』は、スケボーに乗り、自由自在に街路を滑走する青年・小泉彰(Kaya)を映し出したあと、今度は自律神経失調症だと診断される工藤和雄(東出昌大)を映し出すこ…

ザイダ・バリルート『TOVE/トーベ』

Tove - Trailer - YouTube 「トーベ ムーミントロールが優しいのはなぜ?嫌われるのが怖いから?」 「彼は臆病なの、いつも不安なのよ。愛が彼を強くする、愛を邪魔されたら怒るわ」 ムーミントロールを生み出したトーベ・ヤンソン。彼女の愛の物語を映し出…

ドミニク・クック『クーリエ:最高機密の運び屋』

【9/23(木・祝)公開】ソ連高官が語る“スパイの掟” ベネディクト・カンバーバッチ主演、『クーリエ:最高機密の運び屋』本編映像 - YouTube 東西冷戦下、米ソ間の核武装競争が激化するなか、世界の安定を求めたオレグ・ペンコフスキーは祖国であるソ連を裏…

濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』

余計なものを削ぎ落として、ただテクストに従順に向き合い何度も身体に染みつくまで台本を読んでもらうようにしたあとで、現場で初めて感情をのせるという濱口メソッドは、『ドライブ・マイ・カー』本編、家福(西島秀俊)が演出する舞台でも用いられている…

沖田修一『子供はわかってあげない』

主演 上白石萌歌 最新作...映画『子供はわかってあげない』スペシャル動画 - YouTube 2020年夏に公開されるはずであった沖田修一による田島列島『子供はわかってあげない』の映画化作品が、2021年、ようやっと公開された。本作と『おらおらでひとりいぐも』…

松本壮史×三浦直之『サマーフィルムにのって』

大ヒット上映中!『サマーフィルムにのって』本編映像 - YouTube 映画ってさ、スクリーンを通して今と過去をつないでくれるんだと思う。私も私の映画で未来につなぎたい。 私たちが今、映画を観ることができているのは映画というものが存在しているからであ…

丸戸史明『冴えない彼女の育てかた Fine』

劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」本予告 |2019年10月26日(土)公開 - YouTube 真っ暗な画面に浮かび上がる「blessing software presents」。そして、鮮やかな青い空を映し出す画面を回転させながらicy tailの演奏シーンへと一気に向かう劇場版として…

イシグロキョウヘイ『サイダーのように言葉が湧き上がる』

「サイダーのように言葉が湧き上がる」スペシャルPV (never young beach ver.) - YouTube 『四月は君の嘘』のイシグロキョウヘイによるオリジナル作品である。鈴木英人、わたせせいぞう、永井博といった80年代を代表するイラストレーターを意識し設計された…

行定勲『ナラタージュ』

通話を終えて、窓際へと向かう。雨が降っている窓外を見つめ、誰かから貰った時計を大切そうに触る。そして、いつかの記憶へと想いをめぐらせる。 あなたをちゃんと 思い出にできたよ adieu『ナラタージュ』 いくつものシーンで降る甘美な雨。髪や肩を濡らし…

松本壮史『青葉家のテーブル』

[MV]このままじゃ / Chocolate Sleepover(トクマルシューゴ作詞・作曲 - 映画『青葉家のテーブル』劇中歌) - YouTube 「何になりたい?」という質問に、「なりたい自分が毎日変わる」という回答を出す。美術予備校の夏期講習に通うため、青葉家へ居候しに…

フローリアン・ゼレール『ファーザー』

映画『ファーザー』日本版予告編 - YouTube 本作の画面設計のほとんどに忍ばせてある“扉”のモチーフは一体なんであろうと考えてみる(扉は「THE FATHER」というタイトルクレジットとともに映し出されているのも示唆的だ)。そう、それは思考の中に無数にある…

吉田恵輔『BLUE/ブルー』

〈BLUE/ブルー〉 もはや理由もなく、倒すことの快感、女の子にモテるためなど青いイメージが拳に纏わりつき、一心不乱に繰り出され、やがてボクシングに収斂されていく。瓜田信人(松山ケンイチ)は挑戦者(ブルー)としてリングに上り続けるプロのボクサー…

大橋裕之×竹中直人・山田孝之・斎藤工『ゾッキ』

竹中直人監督×山田孝之監督×齊藤工監督 共同制作!映画『ゾッキ』予告 - YouTube 誰かが頑張って守ってくれてる秘密のおかげで、世の中はうまく回ってるんじゃないのかな お姉ちゃんがいるという嘘を訂正できずに、松浦亜弥似のお姉ちゃんがいると言ってしま…

西川美和『すばらしき世界』

『すばらしき世界』本編映像 - YouTube だいたい3年くらいの間隔を開けて、コンスタントに長編映画を発表している西川美和の新作である。『永い言い訳』から5年を経ての『すばらしき世界』はこれまた傑作であったし、役所広司の哀愁を漂わせた佇まいには、そ…

Netflix サイモン・ストーン『時の面影』

キャリー・マリガン、レイフ・ファインズ出演『時の面影』予告編 - Netflix - YouTube 第二次世界大戦直前のイギリス。町の地主エディス・プリティが長年気にかかっていた塚の発掘をしてほしいと、経験豊富なアマチュア考古学者バジル・ブラウンを雇うところ…

坂元裕二×土井雄泰『花束みたいな恋をした』

坂元裕二による初のオリジナル恋愛映画。監督を土井裕泰、ダブル主演を菅田将暉と有村架純が務める。ある社会で生きる登場人物たちの苦悩や生の煌めきを描いてきた坂元裕二が本作では徹底してそういったものを排して、ありきたりな恋愛映画として描いたのが…

オリヴィア・ワイルド『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』

www.youtube.com 傑作。製作総指揮にウィル・フェレルとアダム・マッケイが名を連ね、オリヴィア・ワイルドの映画監督デビュー作。卒業前夜の一晩を描いた青春コメディだ。基本的には『スーパーバッド』を下敷きにしていながらも(ジョナ・ヒルの妹、ふたり…

ウディ・アレン『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』をNetflixで観た。監督はウディ・アレン。主演をティモシー・シャラメが務め、その脇をエル・ファニング、セレーナ・ゴメス、ジュード・ロウ、ディエゴ・ルナなどが固めるといった大変に豪華な布陣だ。主人公であるギャ…

沖田修一『おらおらでひとりいぐも』

沖田修一の最新作を観た。文句なしに今年のなかでもお気に入りになる良さ。沖田修一は『南極料理人』『キツツキと雨』『横道世之介』など、ゆったりしたカットの連なりで世界を作り上げる巧者なわけだけれど、本作でもその持ち味は抜群で、家の中での動線や…