昨日の今日

KINOUNOKYOU

お笑いとテレビと映画と本と音楽とサッカーと…

『Homecomings New Neighbors FOUR Won’t You Be My Neighbor? January 29, 2024 at Shindaita FEVER』

f:id:nayo422:20240129223105j:image2月に開催される『Homecomings New Neighbors FOUR Won’t You Be My Neighbor? February.10, 2024 at Kyoto KBS Hall』にて、バンドからの卒業が決定している石田成美。彼女の最後の東京ワンマンとなった、同ツアーat Shindaita FEVERに参加した。新代田フィーバーでのワンマンは初めてのことだという。

「どこからやってきたかも忘れてさ」「優しいことは忘れないでいる」という円環を意識させた歌詞と天使の輪っかのイメージを描きながら、人間がその歪な世界で生きることの豊かさを謳う『Cakes』によって、この日のステージは幕を開けた。そして、続くのは『I want you back』。そのタイトルが示すものとは裏腹に、かつての思い出を振り返ることでさよならを告げられるようになっていくシーンは、まさに今のバンドを思い起こさせる。ケアという概念を意識したであろう『i care』の演奏が始まる。あなたのことを気にかけながらも、まずは自らの選択と身体的な感覚、生活のリズムを大切にする。その延長線上にあなたもいるのであって、私への矢印があなたへも向かうという間主観的な関係を描き出す。私に閉じるのではない、私の中にこそ、あなたはいる。あなたの中にこそ、私はいるのである。というメッセージは実に感動的であるし、Homecomingsがその歩みを止めない限り、石田成美はたしかにそこに居続けるのだという宣言にもなり得る。

It's a bit like luck

HURTS

ああ 僕らはたまたま美しい
ああ あなたはたまたま美しい

『US/アス』

ホムカミが歌うのは、偶然のかけがえないなさだ。人が生まれるのも、出会い別れるのも、特別何かを見つけられるのも、もしくは見つけられないのも、バンドを結成することも、すべては偶然だ。京都精華大学フォークソング部での新入生歓迎イベントをきっかけに結成されたバンドもまた、そのすべてが偶然によって導かれている。大学に進学する前には、Homecomingsを結成することなんて想像もしていないだろうし、あまつさえメンバーのことなんて知る由もない。そう、“たまたま”なのだ。今この瞬間、新代田フィーバーで音楽が鳴り響くのを聴けているのは、そんな偶然の美しさによって誕生している。

結婚を経てこれからの人生を考えるなかで、家族との未来や自分のからだのことを考えたときに、3人と同じペースで音楽活動を続けていくことが難しいという判断に至った

石田成美(Dr./Cho) 卒業のお知らせhttps://homecomings.jp/news/1766/

石田成美さんは、Homecomingsを卒業することになった理由をこう説明している。そして、福富優樹がさまざまな媒体でたびたび紹介している、スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』に収録されている「右翼手の死」には、こんな記述がある。

もうじき夏休みも終わりだった。大学とか、仕事とか、身を固めて家族をもつとか、ほかのことをする時間が迫っていた。三十五歳を過ぎると、人生の下り坂がどうこうという話がはじまる。四十代に入り、白髪も目につきはじめたフィル・ニークロが相変わらずのナックルでばったばった三振を取っているとか、ピート・ローズも四十二にしてなおヘッドスライディングで頑張っているとかいった話も出てくる。年齢のハンデなんか物ともしないじゃないか、と。けれどおそらく、事実下り坂は訪れるのだ。

スチュアート・ダイベック『シカゴ育ち』「右翼手の死」柴田元幸 訳 53-54頁

もちろん下り坂なんてことはないだろうし、年齢によるものでもないだろう。でも、時間を経て、これまでとは状況が変化したのだ。福富優樹も「仲が悪くなって卒業とかじゃない。2024年も成ちゃんが叩いていても不思議じゃないくらい。そんな感じ」だと話していた。石田成美は「もう感謝しかない。これからの3人の活動を応援してほしい」と語った。畳野からは、当然のように、Homecomingsの未来の予定が告げられる。

「4月に恵比寿LIQUIDROOMで私たちの企画で、リーガルリリーとやります」

先行チケットも会場で販売され、歩みを止めないことを力強く宣言するようであった。でも、ホームカミングとは「卒業生たちを年に一回、母校にお迎えして、ダンスや同窓会など各種イベントを楽しむ」ことであって、ふらっと戻ってきてもいいのだろうし、ホムカミの音楽がそこにある限り、ほとんどずっとそこにいるようなものなのだろう。バンドは形を変えて、続いていく。その時間が長くなるほど、かけがえのない時間の中で4人で鳴らした音楽はより美しさを増していくのだ。

By making it a song,
Can I keep the memory?
I just came to love it now.

『Songbirds』