昨日の今日

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お笑いとテレビと映画と本と音楽とサッカーと…

MOVIE

黒沢清『スパイの妻』

監督 黒沢清 × 主演 蒼井優!映画『スパイの妻』予告編 - YouTube 満州から帰国した優作はスパイとなっていた。その土地で何かを知り、見たのだ。見てしまった優作はもはや正気ではいられなくて、いや、むしろ正気になったために、機密文書と草壁弘子を持ち…

ジョー・タルボット『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

小さな女の子が立ち止まり、防護服に身を包んだ大人を下から見つめている。水質汚染、放射線などで住めるような場所ではなくなっているのだけれど、そこに住むしない少女だ。誰かが演説している。バスが来ない。交通インフラがとどかなくなってしまっている…

Netflix チャーリー・カウフマン『もう終わりにしよう。』

www.youtube.com チャーリー・カウフマンによる傑作ムービーがNetflixから配信されている。まずもって、ほとんど全編にわたって音楽がついていないのがいい。喋る声、吹雪く音、車が走行音とか、足音とか、それだけで映画を構成しようみたいな、一旦最初に立…

リー・ワネル『透明人間』

The Invisible Man - Official Trailer [HD] - YouTube ジョーダン・ピール『ゲット・アウト』『US』、クリストファー・ランドン『ハッピー・デス・デイ』などのブラムハウス・プロダクションズが新たに放つ傑作。ゆっくりスライドするカメラと気配を全身で…

トレイ・エドワード・シュルツ『WAVES』

Waves | Official Trailer HD | A24 - YouTube デジタルネイティブ世代によるニューウェーブである。監督・脚本のトレイ・エドワード・シュルツはテレンス・マリックの弟子だそうで、『ツリー・オブ・ライフ』などにも撮影アシスタントとして参加していたそ…

グレタ・ガーウィグ『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』6月12日(金)全国順次ロードショー - YouTube 8月の最初に滑り込みで観たグレタ・ガーウィグ『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』が素晴らしかった。シアーシャ・ローナン、フローレンス…

フランソワ・オゾン『グレース・オブ・ゴッド』

By the Grace of God | Official UK Trailer [HD] | In Cinemas & On Curzon Home Cinema 25 October - YouTube フランスを代表する監督にまでなったフランソワ・オゾンが、これまでの癖のある“技”を捨てて、そこにある問題を着実に捉えていく『グレース・オ…

中尾広道『おばけ』

PFFアワード2019グランプリ、第20回TAMA NEW WAVE特別賞を受賞した中尾広道『おばけ』は孤独を祝福する素晴らしい作品だ。たったひとりで映画を撮り続ける自分自身(中尾広道)を記録したセルフドキュメンタリーである本作が描こうとするものは途方もない“繋…

アリス・ウー『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』

アリス・ウー(『素顔の私を見つめて…』)の16年ぶり第2作目であるNetflix映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』は2020年の映像作品において見逃せないものである。カトリックの保守的な街。中国系アメリカ人で成績優秀エリー(リーア・ルイス)…

中尾広道『船』と『風船』

中尾広道というたった1人で映画を撮り続けている人がいる。家族に愛想を尽かされたり、借金をしたり、生活を破壊しながらも、映画を撮るということに向き合っている人である。そんな彼が懸命に映し出そうとするのは、人間の“生”だ。ゆったりと、しかし着実に…

村田秀亮『本坊元児と申します』

監督・撮影・編集はとろサーモン村田、主役はソラシド本坊。売れないお笑い芸人の約2年間がおさめられたノンフィクションVTRである。実に苦しくて、しんどそうで、みっともなくて、悲哀に満ちたシーンの連なり。なのだけれど、クスッと笑いがあちこちに散ら…

ダニエル ・ヒベイロ『彼の見つめる先に』

人はいつも誰かを必要とし、手を伸ばす。ジョヴァンナにはレオが必要であり、それだから離れることに抵抗がある。そんなある日、転校生のガブリエルがやってきて、すんなり2人の間に溶け込んでいく。ブルー系の自然色が彼らを包み込み、会話のトーンも、流さ…

クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』

グラン・トリノはウォルトの分身だ。 イーストウッドはDVDのメイキングでそう語った。「グラン・トリノ」は異なる文化、民族との共生、対話、結びつきを描いたものではない。多種多様な民族が混在して暮らしている都市、多民族国家アメリカ合衆国でのひとり…

テレンス・マリック『名もなき生涯』

2011年にパルムドールを受賞した『ツリー・オブ・ライフ』以来、テレンス・マリックの最高傑作ではないか!という興奮とともに喜びたい。しかし上映館も少なく、3時間という上映時間からも観る人は少ないだろうと予想できてしまうのは残念で仕方ないのだけど…

アリ・アスター『ミッドサマー』

不気味な祝祭…アリ・アスター最新作『ミッドサマー』本編映像 - YouTube 怪作。2018年に公開された『ヘレディタリー/継承』で長編デビューを果たしたアリ・アスターがまたもA24とタッグを組んでスウェーデンを舞台に作り上げた長編映画2作目。豊かな色彩と白…

ラジ・リ『レ・ミゼラブル』

フランス代表がロシアの地で20年ぶり2度目のワールドカップ制覇を果たし、民衆は優勝パレードに歓喜する。この大会で10番を背負い躍動した20歳のエンバペはヒーローとなった。クリスティアーノ・ロナウド、リオネル・メッシというサッカー界のスーパースター…

クリント・イーストウッド 『リチャード・ジュエル』

www.youtube.com 1996年アトランタ五輪会場近くの公園でコンサートが行われ、多くの人がステージを見つめ、歌い踊る。そんな中、警備員のリチャード・ジュエルはみんなとは異なる方向を向き、不審なリュックサックを発見する。ライブスタッフに避難するよう…

『シング・ストリート』と『ザ・コミットメンツ』と『1980年代アイルランド』

正確な数値は出ていませんが アイルランドからロンドンへ渡る若者が急増 なけなしの金を手に船に乗る 故国にない希望の光を海の向こうに見て テレビのニュースがそう伝え、仕事がなくなった父親と週3日のパートの母親、大学を中退した兄、大学で建築を学ぶ姉…

五十嵐大介× STUDIO4℃『海獣の子供』

五十嵐大介の世界がスクリーンに大きく映し出されている。その圧倒的な映像表現を観るということは、流花(芦田愛菜*1)が海(石橋陽彩)とガラス越しに出逢ったことと共鳴し、観客の心を鷲掴みにする。誰かと出逢う、それはそのまま世界と出逢うことなんだ…

西谷弘『マチネの終わりに』

一目惚れし、誰かを好きになる。相手のことがわかり、自分のことも受け入れられる。話が合い、時間を共有することで、また好きになる。たった三度しか会っていないにもかかわらず、彼らが愛し合っていることに、「マチネの終わりに」は映像美、音楽、街の風…

呉 美保『きみはいい子』

人と人のつながりの場面で現れる桜の花びら この映画では、基本的に人が出会う場面や理解し合ったときには、あきこ(喜多道枝)の家に新米教師の岡野(高良健吾)が謝罪に来る場面や、雅美(尾野真千子)がはなちゃんママ(池脇千鶴)に抱きしめられる場面な…