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相席食堂『街ブラ-1グランプリ2020』

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 『M-1グランプリ2019』から2ヶ月。敗れ去った決勝初出場組が大阪に集結した。M-1では勿論のことネタの面白さで勝負するのだが、ネタ以外の部分でも重要なことがある。それは審査員との絡みであったり、決勝への椅子を明け渡すときのコメントであったりする。そこでは芸人としての実力が問われる。即座に反応してコメントを返すことで、番組に使われやすくなるのかもしれない。そのようなネタ以外の、むしろテレビに出るためには必要な、芸人の立ち回りのうまさにフォーカスした『街ブラ-1グランプリ2020』が『相席食堂』*1で2週にわたって繰り広げられた。審査員は千鳥。ロケのスペシャリストが的確なコメントをすることでこのロケがさらに面白くなる可能性があるのか、と感嘆してしまう。

 インディアンス、ぺこぱ、オズワルド、からし蓮根、すゑひろがりず、ニューヨークが京橋、新世界というステージに乗り込んでいく。もう全部面白かった。本当に全部面白かったのだけれど、ここでは3組についてだけ言及したいと思う。まずは、ぺこぱ。全てを肯定して笑いに変えていく松蔭時太勇にも限界はある。そんなときにはシュウペイと24歳の女性ディレクターが助けてくれる。怒涛のシュウペイボケとリズミカルな音楽に乗せて特有の編集をするディレクターの手腕。すぐさま巻き戻して何度も見ることで笑い続けてしまう。なんの前触れもなく突如現れる男性など、本当に楽しい編集だ。そして、オズワルドはローテンションに秘められたヤバさが面白い。今冬『映像研には手を出すな!』浅草みどり役で声優をしている伊藤沙莉の兄である伊藤俊介は相席をした人と連絡先を交換するというボケなのかどうかもわからない行為を繰り返す不思議さが奇天烈すぎて訳がわからないのに、とにかく面白い。やはりオズワルドのハイライトはラストの名曲「糸」を歌う場面でしょう。とにかくクソ真面目に畠中が「糸」を歌うのだが、相席したおじさんが切れ味鋭くツッコむ。

なんじゃい!お笑いやろ!

そして生まれるカラオケの連携プレー。複数の糸によって「笑い」が紡がれる。オズワルドのロケもっと見たい!

 最後はニューヨーク。僕はニューヨーカーなので、ニューヨークの出番はまだかとずっと待っていた訳なのですが、M-1ではトップバッターだったのに対して、街ブラ-1ではラストに。やはりニューヨーク嶋佐和也という男はすごい!この一言に尽きるのだが、それを存分に再認識させられた。始まって早々、嶋佐がぶんぶんと腕を振り回し、スパイダーマンを憑依させようとする。嶋佐は何かを憑依させるのが本当にうまい。あるときは孤独なコンビニ店員であったり、あるときはヤンチャな生徒であったりする。しかし、今回のスパイダーマンを憑依させることは失敗してしまう*2。が、そのズレが最高に面白く、このロケの終盤での伏線にもなる。それが喫茶店で外国人にナンパのテクニックを教える場面だ。滑り台を滑る勢いでもって綺麗なオチがつく。

(嶋佐)

日本の女性がイチコロになる口説き文句を教えるよ。

日本の口説き文句には格好良い状況が必要なんだ。

例えば、あれを見て、滑り台、格好良く滑って格好良い言葉。

日本の女性はそれで落ちる。

私は科学者。愛の科学者。

芸人であり愛の科学者。

3…2…1……(壁に激突)

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カッコつけてる奴が3秒後にはカッコ悪くなる。滑り台の上から下へ滑るという配置もそれを暗示しているようでとても面白い。また、酔っ払った女性との相席でもこのズレ、ギャップがある。いつも皮肉を込めた意地悪な漫才、コントをしているニューヨークが、優しく丁寧に対応する。そんなズレが大悟の「佐藤健やん!」というツッコミで笑いに変わる。M-1では最下位だったニューヨークが街ブラ-1では優勝する。「最悪や!」が次回のM-1で「最高や!」に変わる瞬間を心待ちにしている。千鳥のニューヨークに対するコメントも嬉しい。

ニューヨークはね、なんでもできるんすよ。

 

*1:街の人々と相席することで交流するロケ形式の番組

*2:そもそも憑依させる気なんかないかもしれないけど、何かやろうとする嶋佐の無鉄砲さも好き