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Base Ball Bear「C3」

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 僕は前作のアルバム「光源」を聴いたそのあとは何故だかBase Ball Bearから遠ざかっていたのだが、今回の「C3」でグイッとまた引き寄せられた形だ。

 EP「ポラリス」の夜があけて、昼になった新作アルバム「C3」がリリースされた。新曲はわずか4曲であり作られた曲を大事に何度でも聴いてくれという願いが込められている。前アルバム「光源」から“3”年が立ち、“3”人体制による音を見つけた明るいジャケットの星が膨張し、大きくなっているように見えるのは気のせいだろうか*1。爽快なメロディと歌詞のカタルシスはそのままに、これまでのバンド活動をまるっと抱きしめてしまおう!という“人間讃歌”であり、“人生讃歌”である。しかし、それを「EIGHT BEAT詩」ラップの軽さでもって表現し、過去を使って未来へと向かうのは常に最新が最高というBase Ball Bearの進化を目の当たりにできる*2

 ジャケットの色彩からもわかるように、これまでのBase Ball Bearが青春を歌いながら深く深く海の底へ潜っていくのだとすれば、「C3」はちょっと息継ぎでもして空でも見てみようかというようなリラックスしたものがある。そうであるから、より本質的な部分にフォーカスしていく。深く追求するのではなく、抜きの、引き算のリラックス感。

水をつぐように僕の名前を呼んでほしい

息をするように君の名前を呼びたい

 Cross Wordsの歌詞のようにこれまでBase Ball Bearが歌ってきた青春や人間関係は一方的なもので成立するのではなく、あくまでもお互いの呼応によって、また相手が水をつぐという意思をもって呼ぶのに対し自分は息をするように呼びかけるのは、相手をごく自然に受け入れ、相手を尊重した上ではじめて関係というのは生じるとでもいうような、とてもシンプルなものに落とし込まれている。僕の名前で君を呼んで、君の名前で僕を呼んで、とでも言いたくなってしまうほどに、これまでのものから様々なものをそぎ落としより情感溢れるパワーが備わっているように感じる。

  それでも前アルバム「光源」から逆バタフライ・エフェクト

自分こそだよ 運命の正体は

 

僕ら好き嫌いをくりかえして
エス・ノーを幾度 選び続け
右往左往 何万回目の今日にたどり着いて
まだあの日あの時ああしてたらって
祈り呪いが尽きなくても
いま、この時こうしてること「も」鳴り響いて
決められたパラレルワールド
決められた並行世界へ

と歌詞で綴っていたことは「C3」風来で継続していく。歩んできた道は運命であり、受け入れるしかない。それこそが自分であり、かけがえのない美しいものであるのだ。何度も選択し、ここにいる。成功も失敗も全てを愛そう。この選んできた道を歩み続けるしかないのだと力強さでもってこのアルバムを締めくくるのは、やはり次回作を最高にするべく野心が迸る。

音の鳴る方へ すかさず手を伸ばし止める
まだ暗い窓開けると冷たい
2泊で好きになった街に水性のオレンジ
営み 灯る 朝に
左から来たもの右へ手を加え渡し
凝り固まった毎日を噛み続けて
文と文の間の意味は汲みとりすぎて
気づけば味がなくて
短い車両の電車は走る ゆかりのない景色
青い風 ここにいたのか 親指を立てて笑う
綺麗だね忘れかけてた 光と命がおどる当然
「血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』」
パノラマに白い雲 流れる
日に3度飲んでるサプリ 手を伸ばし止める
反射で開いてたアプリも閉じる
しばらく帰ってない故郷の親の顔浮かぶ
生活ってやつは難く
海岸線をブランコでまたぐ イメージじゃ宙返り
風まかせ 誰もがJourney 小指を交わして約束
あなた宛 書いた手紙 押入れの箱に根を張る 秘密
動くベルトの上で維持してるスタイルに いま接吻を送る
ふかふかの白い飯かきこむ
青い風 もう行けよって親指を立てて笑う
風まかせ 誰もがJourney 掌を透かして掴む 灯り
「血のめぐりを固めないためには『同じ姿勢でいないこと』」
湯に浸かり次の旅 思うよ

 

*1:3人がそれぞれめちゃくちゃカッコよくなってる

*2:関根史織チャップマンスティック