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「推しが武道館いってくれたら死ぬ」ファイルーズあい


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 TVアニメ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」が面白い。新進のファイルーズあいを主役に据えてのアニメ化だ。

 岡山県で活動している7人組の地下アイドルグループ「ChamJam*1」メンバー・舞菜の女オタクえりぴよは、バイト代の全てを貢ぎ、いつも高校の時に着ていた赤ジャージ姿でキンブレを振り続ける。そして、舞菜もその応援を嬉しく想うが、2人の気持ちは儚くもすれ違ってゆく。

えりぴよさん、今日も会いに来てくれてありがとうございます。明日こそ素直に想いを伝えたいな。

 通りすがりのえりぴよに桜の花びらが舞い降りる。桜が咲く公園から物語が始まるのは何とも示唆的だ。桜の花びらはいつかはきっと散ってしまう。けれど、その花びらは風に乗って思いがけない誰かに必ず届くのだ、というようにお客さんの少ない舞台上で一生懸命に踊る舞菜のキラキラはえりぴよに見事に届き、魅了する。しかし、「推しが武道館いってくれたら死ぬ」では、アイドルがファンを魅了したり、ファンからアイドルへ向けられる声援が一方的に描かれるのではなく、双方向の心の対話によって紡がれていく。確かにアイドルは綺麗に咲いては散ってゆく桜の花びらのような存在であるだろう。だが、アイドルにとって、ついては離れるファンの存在もまた桜の花びらのようである。アイドルである舞菜とファンのえりぴよのすれ違い続ける関係の儚さに、えりぴよは舞菜が武道館にいったら死んでもいい、と言い切ってしまうのも切ないところだ。アイドル活動には終わりがあり、そうなればファン活動も終わる。いつかは散ってしまう、その儚さが美しい。咲いては散っての繰り返しによる世界において、アイドルが踊り、ファンが手を振るというシーンは、それゆえに濃密でかけがえのないものだ。

全世界のみんなが舞菜の可愛さに気づいて好きになればいいのに。

私はアイドルがんばってる舞菜が好きだから、だから私のものにってより、みんなのものになって欲しい。そして、当然その中でも私が1番舞菜のこと好きだって知ってる。

舞菜武道館いってくれたら死んでもいい。

 えりぴよを演じるファイルーズあいの出演が今期は「推しが武道館いってくれたら死ぬ」だけであることに驚きだ。昨年の「ダンベル何キロ持てる?」でデビューすると、趣味が筋トレということもあって、同アニメでなかやまきんに君と企画を行い、NHK総合みんなで筋肉体操」の新春特番でも筋トレを実演した。他にも、アラビア語エジプト方言の日常会話やデスボイスが特技などあらゆる武器を持っているのがファイルーズあいなのだが、声優として演じるにあたってその持つものを全て消すことができる。「推しが武道館いってくれたら死ぬ」において、ファイルーズあいのキャラの濃さなんてものは一切なくなり、そこには、えりぴよだけが確かに存在している。2018年に声優活動を開始したとは思えない円熟味だ。にもかかわらず、まだ事務所に正式に所属ではなく、預かり所属となっているのも、なんというかとても面白く驚いてしまおう。とにかく、新進声優の中でファイルーズあいは最注目なので春アニメではたくさん観られるといいな。

*1:ちなみに僕は水守ゆめ莉推しです