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Base Ball Bear 20th Anniversary 『(This Is The)Base Ball Bear part.3』日本武道館公演

f:id:nayo422:20221110215942j:image「1回目と2回目と今回の武道館公演を比べて、動員人数がタイなんですよ。これってすごくないですか?」と小出裕介はMCトークのなかで話していた。ベボベの始まりから今日までずっとついてきた人もいれば、途中で離脱してしまった人もいるだろう。そして、この20年のどこかで合流した人も当然いるだろう。私は『真夜中のニャーゴ』のヘビーウォッチャーであったので、ベボベを大好きになったのもその時期だ。それよりも前から存在自体は知っていたし楽曲も聴いていたとは思うのだけれど、ぐっと引き込まれたのはやっぱり番組放送時の2015-2017年辺りだと思う。当時はライブにも足を運んだし、『光源』リリース記念スペシャル・トークイベントを観にタワレコにも行った。なので、私のベボベ歴としては6〜7年くらいで、前回の武道館には当然行けていないし、ましてや私が初めてベボベをライブで観たときにはもう3人だった(湯浅さんの発表も『ニャーゴ』でしてましたね)。

「メンバーの脱退などもあって、ファンをふるいにかけるようなことばかりしてきたし、応援し続けるモチベーションを維持しづらいバンドだったかもしれないけど、本当にありがとうございます」という感謝も述べていた。

Base Ball Bear10年ぶりの武道館公演に参加したのだ。ベボベのライブは5年ぶりとかだったのだけれど、もうほんっとに今年のベストライブで感動しすぎてしまった。最高!オープニングを飾るのは『17才』。バンドの始まりを告げる衝動からのスタートであって、20周年を物語として編み込んでいく小出裕介らしい構成が感動的である。「緊張はしているけれど、1、2回目と比べてどこか落ち着いている感じがある」と話していたのだけれど、それは武道館という空間ではなく、どこかライブハウス的な空間を意識していたからではないかと感じた。小出裕介が救われたあの空間だ。

いつでも飛ばしてよSOS
そのHAND PHONEで

君の事に気付いている
人がきっといるから

『17才』

下北沢ガレージでの思い出深いことと言えば、高校3年生の時だったんですけど、年上のバンドマンの人たちが本当に良くしてくれたんですよ。僕なんて学校に友達いない人間でしたから、学校しんどかったんですけど、ここにいる人が「いいね曲!」とか言ってくれて、ああ、そうか、学校の外に行けばこういう社会があるんだってここで知れた」と昨年、12月31日に開催された下北沢ガレージで小出裕介は話し、ライブ終盤には「音楽」について言及していた。

僕にとっての音楽とかロックっていうのは「継承」だと思っています。
引き継いでいくことだと思っています。
先人からいろいろと影響を受けましたし、同じ時代を走っていたバンドたちだったりとか、仲間たちだったりとか、そして、今日のこの無くなってしまう場所でのたくさんの思い出、切磋琢磨した人たち、鳴った音楽たち…
そのエッセンスを一滴でも多く…
こういう場所があったということがたとえ忘れ去られたとしても、ここで鳴っていた音に鍛えられた我々みたいなバンドがいて…
魂とか精神とかいったものを引き継いでいきたい。
そのためにもバンドを辞めねえぞ、と思っている次第でございます。

今回の武道館でも「解散はしないよね⁉︎(小出)」「ないでしょ笑(関根)」「するわけない笑(堀之内)」というような会話があったけれど、昨年のこのライブを見ていれば当然解散の心配なんかはないわけである。

武道館が終わったあとも、継承の物語は続いていくのだ。それはBase Ball Bearが音楽を続けていくことで、これまでの仲間たちの魂を引き継いでいくということであるけれど、私たちもまた聴くことを通して、今はベボベから離れてしまっている誰かの思いも繋いでいるということでもある。それは過去においてもそうだし、これから聴くかもしれない未来のベボベファンにとってもである。「To alive by your side」と歌う『DIARY KEY』が響く。

いつか君に渡せたらいいな

『DIARY KEY』

優しさだけじゃ生きられない
別れを選んだ人もいる
再び僕らは出会うだろう
この長い旅路のどこかで

Mr.ChildrenTomorrow never knows

私は湯浅将平がいるBase Ball Bearを見たことがないし、もうこの先4人での演奏を見ることは叶わないのだろうけれど、「君」に含まれたすこしの可能性をほんとにちょっとだけでも願ってしまう。『17才』『DIARY KEY』ときて、「檸檬を齧る君の事/ただただ見つめていたよ」と歌われる『LOVE MATHEMATICS』。ライブ冒頭の3曲は、誰かへ向けられる視線というものでまとめられており、“恋のようなもの”としてのまだ不確かな感情が青春映画の瑞々しいショットのように武道館へ提示される。そして、その不確かな感情が『GIRL FRIEND』『LOVE LETTER FROM HEATBEAT』『初恋』『short hair』というベボベ珠玉のポップチューンにのせて、確かな“恋”として爆発する瞬間の胸の高鳴りは尋常ではない。レモンスカッシュ感覚。

「3」を強く意識させる『ポラリス』、「4」であったことをどうにも思い出させてしまう『ホワイトワイライト』*1、「思い出は日常に溶けて/いつのまに物語に変わっていってしまう」と、それでも

さよならは言わなくていいよ
失くしたものにも どっかでまた会えるのさ
かなしみも連れていくよ
それでいいんだ 終わらない予感は消せない

と歌う『海へ』。そして、『changes』がくる。「4人でBase Ball Bearだって言う人もいるのかもしれないけれど、3人で頑張ってきたから今がある」のだと小出裕介はMCのなかで語っていた。4人であったことがすべて過去のことであるとか、すべて消し去ってしまうとか、そんなことを言っていないのはライブのセットリストからも伝わってくるだろう。ずっとすべてが地続きで繋がっていて、いま3人であるからこその音楽があり、Base Ball Bearがあるのだと、最新シングル『海になりたいpart.3』を演奏してくれるのが感動的だ。そのあとはもう『すべては君のせいで』『「それって、for誰?」part.1』『十字架You and I』『The Cut』『Stairway Generation』『ドラマチック』とお祭りでした。こいちゃんの『The Cut』ラップ始めてライブ見たのでむっちゃ興奮しました。文化祭の夜。

アンコールではこれからの旅の予感を告げる『風来』、これからの世代へ進んでいくことを夕方の沈みとともに実感する『夕方ジェネレーション』、そして、また朝がやってくる、ゆっくりとでも確かに進んでいく決意を込めた『ドライブ』*2で武道館公演は締め括られた。20年の中で個人も世界もいろんなものが変わってしまった。大切なものは慈しみながら、進んでいこう、と。

最後に、開演前SEで流されていた楽曲を確認できた範囲で共有しておきますね。開演前からグッとくるものばかりで感動してしまった。「僕にとっての音楽とかロックっていうのは「継承」だと思っています。引き継いでいくことだと思っています」と語っていた小出裕介の姿がまた思い起こされる。こいちゃんはおそらく津野米咲さんのギターを弾いてた。来年はたくさんベボベのライブに行こう!と思いました。

サカナクション『Ame(B)』
the pillowsスケアクロウ
チャットモンチー『東京ハチミツオーケストラ』
赤い公園『オレンジ』
TRICERATOPS『if』
Chocolat『ベースボールとエルビス・プレスリー
スーパーカー『RECREATION』
フジファブリック『赤黄色の金木犀
ACIDMAN『赤橙』

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*1:『ホワイトワイライト』PVは4人ベボベのたくさんの過去映像を振り返る構成になっている

*2:『ドライブ』に寄せられた文章としてはこれが素晴らしい。https://rockinon.com/news/detail/197638.amp