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呉美保×菅田将暉×古川琴音『虹』

f:id:You1999:20201206031016p:imageカメラがゆっくりパンしていくと、薬指に指輪がはめられている左手が映し出され、そのまま進んでいき寝ている古川琴音の姿も映し出されると、その手が彼女のものだったとわかる。そして、画のなかにまた違う左手が入ってきて、寝ている顔を突く。その手の薬指にも指輪がはめられていて、2人は結婚しているんだろうということがわかって、それと同時にこのカメラをかまえている存在もまた明らかになる。寝姿を撮られて照れている古川琴音がキュートに顔を隠し、カメラがだんだん下っていくとそこには赤ちゃんがいて、菅田将暉

君を想う事だけで 明日が輝く

と歌う。ここまでが約45秒。無駄がなくて素晴らしいビデオだ。一連のカメラの運動の中に微笑ましい営みのようなものが詰まっていて、菅田将暉の野暮ったい歌声がそこに重なっていくとそれはもう好きになってしまうのです。ミュージックビデオを監督するのは呉美保。菅田将暉が呉美保へと仕事をつなげる、こういうところに最近の菅田将暉のなんたるかみたいなものが発揮されている気がする*1。「虹」という曲の先に在るものは何だろう。それが映像で表現できたらいいなと漠然と考えていたら、毎年届く、呉美保さんからの年賀状の家族写真を思い出して、顔が浮かんだのだという。菅田将暉ナイスすぎる。呉美保が子どもを扱った作品としては高良健吾主演の『君はいい子』があるだろう。そこで印象的なアイテムとして登場するのが桜なのだけれど、桜の花びらが街に降り注ぐ、笑っている人のところにも、泣いている人のところにもしっかりと行き届いて、お節介かもしれないけれど、優しく慰めてくれるのだ。しかし、その花びらがもしも届かないことがあるのなら誰かがその人のもとへと走り出さなければいけない、誰の日々もが素晴らしくて、子どもの未来を育てなくてはいけない、とそんなあまりにも素晴らしいメッセージを桜の花びらと高良健吾の走りに乗せて表現した呉美保が、このミュージックビデオで扱うのは“虹”だ。それは4分31秒を通してずーっと映し出されている。豊かな色彩で溢れていた洗濯物を干した屋上で2人で踊ったり、子どもをおぶったりする。ミルクをあげたり、一緒にハイハイをしたり、服や小物など、とにかく色で溢れさせることで、そんないろんなところに虹はかかっているのであり、こんなにも我々の日常は色鮮やかであり、誰のもとにも虹はかかるのだ、という願いとともに彼らの未来を祝福する。『君はいい子』での“抱きしめる”というモチーフと菅田将暉がビデオの中で発する

一生そばにいるから 一生そばにいて
一生離れないように 一生懸命に
きつく結んだ目がほどけないように
かたくつないだ手を離さないから

が共鳴するたびに胸を撃たれてしまうのです。人と人の結びつきが虹*2をかける。『そこのみにて光り輝く』で汚い犬役を菅田将暉に演じさせていた呉美保が、ビデオのラストのほうで菅田将暉のクシャクシャの泣き顔をカメラに収めるというのも最高だ。


菅田将暉 『虹』

 

*1:米津玄師、坂本裕二、Creepy Nuts、OKAMOTO'S、小山田壮平などなど、その他にもたくさんありすぎ

*2:“虹”「ありのままの二人でいいよ」“NiziU”「大丈夫よ、そのままで」