ビデオが終わると誰もが失恋したかのような儚げな想いと、しかし、確かにこの幸福な時間は存在していたのだ…とまでに錯覚してしまいたくなる豊かな4分24秒。LE SSERAFIMリーダー、キム・チェウォンによる宇多田ヒカル『First Love』カヴァー動画がクリスマスに公開された。
LE SSERAFIMでのチェウォンはそのグループコンセプトのもと、「恐れることなく前に進む」を体現したかのようなカッコいい表情や佇まいを見せてくれているのだけれど、V LIVEなどのコンテンツでは「IZ*ONE」や「WIZ*ONE」といったことをうっかり口に出してしまう天然な印象をも垣間見せてくれている。髪の毛をバッサリ切り、LE SSERAFIMとしての新しいイメージを届けてくれた2022年のチェウォンであったのだけれど、まさに天使と形容したくなるほどの柔らかで多幸感のあるオーラもまた彼女の魅力なのであって、現在のグループコンセプトではすくいきれない魅力があることを感じた年でもあったように思う。
しかし、であるからこそ今回のカヴァー動画はそういった懐古主義的な思いを断ち切れずにいるファンへ向けて意味のあるものとなっている。IZ*ONE時代にも歌ったことがある楽曲を再びまたここで歌うことによって、過去を振り返りながらも時間は進んでいくことと、そして、またその先の未来でもう一度出会い直せるということを囁くように教えてくれるのだ。恐れることはないのだ、と。
新しい歌 歌えるまで
立ち止まる時間が動き出そうとしている
Now and forever
そう、冬の透明感のある中空に淡く儚い歌声が通り過ぎるとき、この未来へのイメージがLE SSERAFIMのグループコンセプトである「恐れることなく前に進む」を異なる形で内包していることに気がつくだろう。もうすぐ2022年が終わる。来年のLE SSERAFIM、そして、キム・チェウォンがどんな活躍をするのか楽しみである。
[COVER] KIM CHAEWON - First Love (원곡 : Hikaru Utada) - YouTube