冬になると2015年3月14日の北陸新幹線開通を記念して製作された『大好きな人に、会いにゆく』を観たくなってしまう。ぜひとも、観ていただきたい作品なのです。川上未映子が特別に書き下ろした短編小説を原作に、森カンナと坂口健太郎が出演している本作は、転勤で金沢に移り住んだ恋人（坂口健太郎）に北陸新幹線に乗って会いにいく彼女（森カンナ）の1日を描いている。川上未映子の文章を森カンナが読み上げる声と心地よく画面を満たしていく上村叶恵さんの音楽は言及する必要がないほどに素晴らしいのでして、さらには、カーテンの揺れ、満員電車が見えそれよりも速いスピードで街を流していく車窓、坂口健太郎の生活と人となりが表出したような頼りない襟足、再会する2人を中心に映し出しその前を学生、会社員などが駅に向かい、それとは反対方向に通り過ぎる人もいるという慌ただしい社会の喧騒のなかで久しぶりに会える時間を得たのだということ、昼にはポケットに手を入れて歩いていた2人が夜になると手を外に出して歩いているというショットを反復させることによって描きだす距離感などなど、滑らかに、しかし、豊かな物語が短時間に描かれていくことが感動的だ。
離れていても、すぐそばに、すぐ近くにいるようにいるように思える。だったらそれはもう、離れていることにならない。私たちは、いつも一緒にいるんだと思いながら、動き出した新幹線の窓から、大好きな人に向かって、もう一度、手をふる。
北陸新幹線が左から右へと走っていく。窓外を見つめる彼女の首には赤いマフラーが巻かれているのであって、その糸を途切れさせない為にもまたこの新幹線に乗るのだろうし、今度は彼が東京に行く番なのかもしれない。
余談として、勝手に「北陸新幹線開業」応援ソング！であるJumpin'『BYUUUNN!!』もぜひ。
ビューーーン!! って、
「I need you」って「I love you」って
そんなキモチ運ぶから
GO! GO! GO! まだ急上昇(中!!)
もっともっと速度上げてくよ
ビューーーン!! って、
「会いに行く」って「待っている」って
そんなキモチをつないでいく
YES!! もう too far なんかじゃないよ?
ほらね、ひとっとびJumpin'『BYUUUNN!!』
