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押切蓮介『ハイスコアガールDASH』1巻

コントローラーを握りしめて画面を見つめるハルオ。そして、そのうしろでハルオを見つめる日高小春。ドラゴンボールED『ロマンティックあげるよ』でのブルマや『名探偵コナン』EDでの毛利蘭の切ない視線というようなフィーリングを含んだその日高小春の眼差しを目撃するのは私たちだけであり、ハルオは振り返ることなく画面、そして、その先にいる大野だけを一心に眼差し続ける。そのために、日高の想いは報われることなく、切ない視線そのままに存在してしまう。それを私たちだけが目撃しているわけであるから、日高小春のハルオへの想いは、私たちから日高への想いへと遷移して、その報われない心を追いかけていきたいと思わされてしまうのである。そして、10年以上が経ち、28歳となった日高小春。中学3年生の教師として日々を過ごすその姿が収められた『ハイスコアガールDASH』1巻が発売されれば、それはすぐさま読まなければならないのです。

ゲームによって対話をしていたハルオと大野。その間に入っていくために、自らもゲームをすることで、彼らとの対話を成立させようとした日高。現実とゲームがリンクする『ハイスコアガール』でのコミュニケーションの物語は『ハイスコアガールDASH』でも継続して用いられていて、今度の教師となった日高は、生徒とのコミュニケーションのままならなさに悩まされている。ハルオと大野との接点であったゲームのようなものがなかなか見つけられずにいて、しかし、かつてのコミュニケーションの手段であったゲーム機を“こんなもの”と言ってしまわねばならない責任も同時に持ち合わせているという難しい立場にもある。

“こんなものを”って言っちゃったなぁ…私…“こんなもの”って…言っちゃう人間になったんだなぁ…

生徒とのコミュニケーションの手段を持たないでいる日高は片桐との対話もうまく成立しない。

「…ねぇ…いろいろ事情があって…何かしら耐え忍んでいるなら…私に相談して」

「…じゃあ100万くらいよこせよ、おい、先生よ、これから私に干渉しないでくれっかな…」

そんなときに、見回りとしてゲームセンターへふと立ち寄り、コントローラーを操作することで、少しだけ繋がりが生まれそうな糸口が見え隠れする。コントローラーを動かし意思表示し、それに応えるかのように画面の中でキャラクターを動く、そのコミュニケーションの繋がりが、そこには立ち会った片桐美和、山井真治、沢田由利、有栖などをも繋いでいき…!というところで1巻が終わりということなので2巻が楽しみですねー。