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水橋文美江『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』第8話

f:id:You1999:20201216012800p:image第8話。青林と美々は付き合うことになって、それはもう幸福な時間だ。たくさんのお話をする。青林が子供の頃よく見ていた岩手山の話*1、震災の頃どうしてた?って話、医大生の頃に解剖実習が苦手で落ちこぼれだったという話、私服がダサいから服屋でバイトしたらセンスが良くなるかなって思っていた話、新聞配達をしていた話。そんなお喋りが楽しすぎて、この前までひとりで観ていたインド飯の動画も2人で観ないとあんまりときめかなくなってしまう。美々は檸檬にいろんな固有性(=名前)を見つけ出そうする。青林、青ちゃん、風一さん、風一、ふーふー、ふーちゃん、ふーすけ、ふー、ふーち、といろんな側面を見つめていると、ゆきちゃんという名前がふっと登場する。ゆきちゃんは両親の跡を継いで新聞販売所の所長になり、個別配達を生かして地域見守り隊の見守り隊長を始めて、最近では新型コロナウイルスの影響で居場所を無くした外国人留学生に働く場を提供して、青林とは一緒に新聞配達をして、幼稚園の頃からの幼馴染で、ふーちと呼んでいた仲だったらしくて、青林の父からはゆきちゃんとの結婚話が持ち上がったりもするという。誰かの側面を見つめていると、別の誰かの側面につながっていく。スマホの画面という一面だけでつながっていたときには想像もつかないほどに、人間は多面的にできていて、いろんなことがごちゃごちゃしてくる。それは幸せなこともあるだろうし、面倒くさいこともいっぱいある。そんな時、青林の叔母も家にやってきて、そこでもゆきちゃんの話だ。フランス料理(私)とお似合いな食べ物はあるだろうか、と探していたことがそのまま美々へと跳ね返ってくる。

叔母「(ゆきちゃんは)穏やかで物腰が柔らかで風一と良く似てる。優しい子よ。風一とお似合いだと思うのよね〜。ゆきちゃんとなら、あったか〜い家庭を築けると思うの」

青林「そうだね。そうかもしれない。自分とよく似た人とお付き合いする方が良いのかもしれない。でも、のりこさん、僕は彼女といると楽しい。もともと産業医の先生として出会ったわけじゃなくて、立場とか職業とか、見た目とか、そういうの関係なく、SNSでね、ひとりの人間として出会って、やり取りして、そこから実際にお付き合いが始まったのもここ最近のことで、自分とはあんまり似てないから、自分と違うから会うたびに惹かれるし、会うたびにもっと一緒にいたいって思う。前に、彼女が僕のことをいつからか1日に1回は必ず、今日も好きだなあって、そう思うようになったって、言ってくれたことがあって、僕は今、1日に1回は必ず思うよ、ああ、今日も会いたいなあって。朝起きた時とか、バス停でバスぼんやり待ってる時とか、夜寝る前に窓から空を見上げた時とか、会いたいなあって、どんどん思う。すっごく思う。めちゃくちゃ好きになってると思う。だから他の人は考えられない。結婚は彼女以外、考えられない。僕にとってはフランス料理じゃないし、大桜美々だし」

なんたる愛情の塊。檸檬と草モチという何者でもない食べ物の記号でつながり合った2人は人間と人間の関わり合いを強くしていくのだけれど、美々は幸福を感じながらもちょっとばかし疲れてもいるようで頭にぽっかり穴が。予防教室の申し込み書がペーパーレス化したのを失念していて、紙を切り刻んで処分しなければならない。人間っていうのは面倒くさくて、美々はSNSのチャットでのお喋りを再開してもいいかと青林に聞く。しかし、8話でのチャットは前までのそれとはちょっと違う。もう声も姿もわかっているし、誰かと出会うというよりかは誰かと出会わないようにするためのチャットになってしまう。ほっぺのホクロを取ってあげるよ〜、とイチャイチャしていたあの幸福な時間が再び訪れてほしい、と願うばかりである。

*1:富士山だと思っていた山。羊の代わりに数えるとよく眠れるらしい