僕らが見つけた冷蔵庫のドア 間延びした夢 消せない日々の匂い
取っ手の取れた愛からこぼれた情に湧いた虫は翼でどこかへ飛んでいって
幸せになる
うつくしき僕らの生活仲間たち
焦らされ せつかれて喜びを分かち合える
いとしいひとカラオケにいこう! 穴埋めにいこう
あんまりにも平坦すぎてどこなのかもわからん道を
走る走る
消し炭になるまでの一瞬の瞬き 見せつけあっていたよ
悲しい重ね合いで
二度と戻らぬように蓋した感情このままでもいいのか
問いただすより僕らは
癒してほしい
うつくしき僕らの生活 子供たち
認め合って慰めあって 喜びを分かち合える
いとしいひとカラオケにいこう! 穴埋めにいこう
あんまりにも優しすぎてどうなのかもわからんままで
走る走るBBHF『僕らの生活を』
合唱の大会中、ある男にずっと見られているような気がしていた。終了後、控室を出ると、突然、その男が言ってくる。
カラオケ行こ!
見るからに怪しいその男は成田狂児というヤクザだった。組長が開催するカラオケ大会で失敗すると刺青を入れられてしまうことに怯えている。そんなわけで、歌を教えてくれと合唱部部長の岡聡美に頼んでくる。「よろぴく」とか、起こっているおかしな出来事を前に冷めた真顔で対応するシーンとか、連続したコマが並んでテンポよく盛り上がっていく笑いとか、面白いところは色々あるんだけれど、『夢中さ、君に』『女の園の星』ほどには爆笑ポイントがないように思う。しかし、つながりがいい。ヤクザの成田狂児の十八番はX JAPAN『紅』でして、即座に、黒いスーツや車と重なり合って、黒と赤、北野武『アウトレイジ』シリーズの凄みを持ってくる。それと対照するように、実に瑞々しくて、透き通っているいるかのような、真っ白なYシャツを着た中学生の青春部活エピソードの爽快さよ。階段の上りと下りの中間に位置する踊り場で、繰り広げられる視線の外し、そして、背中を向けるという動きの繊細さ。変声期で声が出なくなるという不安定さを、階段の上りと下りの途中に置いてしまう見事さに痺れてしまおう。
そう、少し戻ると、黒と赤というのは実に意識されていて、狂児がお礼にあげるイチゴだったり、突如現れる切り落とされた指だったり、ラスト事故で、事故った車を発見し『紅』を歌い上げるなどなど、黒いそのすぐ横にはバイオレンスがあるという見せ方が抜群だし、でも可愛らしいイチゴのようなショットも差し込まれるので、2人の関係が緊張感を持って育まれていく過程にキュンときてしまうこと必至です。
ときに、カラオケシーンが最高な作品としては坂元裕二『最高の離婚』があるけれど、和山やま作品を実写化するのであれば、絶対に瑛太にして欲しいと思う。
沢田研二『君をのせて』とか最高ですよね。窮屈そうに歌ってから、少し迷って、今度はちゃんと歌うってのがいいですよね。