ふと流れてきたTVCMに心を奪われてしまった。まずもってこの画の素晴らしさよ。遠くで揺れる緑と手前でたなびく白と黒のTシャツ。そしてベランダで中島セナが何かを見ているのか、特に何も見ていないのか、考え事をしているのかいないのか、涼しげな顔で格子に肘をついてそこに存在している美しさ…。ぼや〜と眺めているここまでの一人称視点が物語の始まりを実にドラマチックに仕上げている。
すると、ひとりの青年がやってくる。どうやらTシャツがお揃いであるらしい。
あっ、そのTシャツ、キミもセブン-イレブンで買ったのかな?
なんてことを考えていると、中島セナがこちらを向いてきて、上からの目線に少しドキッとしながらも、人と人の出会いがひっそりと生まれるキラメキ。Tシャツがお揃いかもしれないという、そんなちっぽけで、でも大きなことに、自分のストーリーを重ねてしまうのがいいのだ*1。
ぼくと…お…そ…
カメラがゆっくりとズームしていき…主導権が握られていく…。中島セナの吸い込まれてしまいそうな視線とこちらのぼんやりした視線がぶつかる…。ガツン。
おそろ
ハっと息を呑んで、ズサっと買い物袋を地面に落とす。そして音楽が鳴る。
バン!
と中島セナに心を撃ち抜かれて、キュンとしてしている青年の茫然とした顔が面白い。クスッと笑えるいいTVCMだ。そう、ここまで観て、あれれ?と思ったのだけれど、このTVCMはthe peggies『君のせい』Music Videoをめちゃ意識して作られているのかもしれない。こちらのヒロインも中島セナ。
the peggies / 君のせい Music Video
視線とアイスの落下。バン!と撃つ運動は『青春ブタ野郎』OPの桜島麻衣のそれである。そうだとしたら冒頭で中空を漂っていた中島セナのあの視線には複雑な物語が多分に含まれているのかもしれない。そんなところに現れたある青年…。なんだかロマンティックなストーリーかもしれない。と、いろいろ書いたのだけど、まあとにかく涼しげな夏の1日が30秒のなかに詰まっていて心地よいのだ。
Tシャツを着ると誰かと出会う。ステイホーム現代の夢のようなシーケンスである。
*1:田島列島『子供はわかってあげない』の帯分「誰かと出会うことのおかげで僕たちは生きていける」