昨日の今日

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お笑いとテレビと映画と本と音楽とサッカーと…

Netflix『ベビー・シッターズ・クラブ』


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Ooh I just wanna make you happy
あ~もう! 笑ってほしい
忘れちゃった笑顔も大丈夫ちゃんと取り戻して
その笑顔見てるとき、ほんと幸せ

NiziU『Make you happy』

NiziUを見ているときのように微笑んでしまうほどに元気をもらえるポジティヴな大傑作である。なぜならこれが話すことによって相手を理解し、そして自分を理解しようとするという対話劇であるからだ。分断と孤立がテーマになってしまった現代で、助け合うことの美しさをポップでユーモラスに描いている。クリスティ、クラウディア、メアリー・アン、ステイシー、ドーン、それぞれが純真無垢に相手を理解しようとする眼差しが途方もなく眩しい。みんな笑顔でいてほしい!と思ってしまうのだ。

本作では、いくつもの「ごめんね」「ありがとう」「いいよ」という間違いを認め、許し、相手を受け入れ、そして互いを理解しようとする様子が描かれる。その道筋が実にキュートで、スマート。涙が出てしまう。

私にとっての“礼儀”は、間違いを認めること。相手を信用すること。なにより良い友達でいること。平等につくられた人間が、よりよくつながるために。

それが私にとっての“礼儀”だ。

という第1話のクリスティのセリフ。間違いを認めることと、相手を信用すること。よりよくつながるためには、その礼儀を経なければならないと紡ぎ出される友情が燦然と輝く『ベビー・シッターズ・クラブ』は素晴らしいジュブナイルドラマである。複雑になってしまった現在地で迷子になっている私たちに改めて本質的な、最も大切なことを伝えてくれるのだ。

親友と会話するためのライトの点滅、一目惚れした相手への視線、カラフルな衣装や雑貨などなどハッピーに溢れたアイテムたち。ティーン向けであるから、ストーリー自体も1話完結だったりとある程度はわかりやすく配置されてはいるのだけれど、その隙間に、LGBTQや人種、不平等などの問題が随所に散りばめられていて、細部への充実も抜群*1。カットバックするあらゆる問題のなかで、彼女たちの多様性が育まれていく。様々な困難を経て、大人であったり、社会であったり、というものと対峙することになるのだけれど、そこに拒絶がないのがいい。ちゃんと話せば、“大人は判ってくれるかもしれない”という姿勢にまたしても涙ぐんでしまう。本作に出てくる相手は決して“判ってくれない”存在ではなく、少しばかりでも希望が含まれた存在であるのだ。

居場所を見つけた瞬間だった。クラブだけでなく、より大きな場所に…。コミュニティだ。そのままの私を受け入れてくれる。

そうして、形作られていく経験、価値観は新しいポジティヴなパワーを持ってくる。第3話、ステイシーが自分の居場所を見つけたように、個人が何も変わる必要もなく、そのままに受け入れられるコミュニティが存在するというのはなんと幸せなことだろうか。この誠実で正直な訴えが広がるのには、5年、10年、20年、もしかしたらもっとかかるかもしれない。でも、本作を見ている人間がたくさんいるのなら、諦めてしまうのはもったいないかもしれない。誰とも違うあなたが必要。We need youだ。

No matter where we were or who we met along the way , we were still us.

どこにいても、誰と出会っても、私たちは私たち。


NiziU 『Make you happy』 M/V

 

*1:クィア・アイ』が当たり前に出てくるのも素敵。寛容と受容がここでも示されている。