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NHK ネコメンタリー 猫も、杓子も。『保坂和志とシロちゃん』

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2018年に放送されたものの再放送を観た。もの書く人のかたわらにはいつも猫がいた。という一文が添えられた、猫と作家の日々をカメラにそっとおさめる異色ドキュメントだ。

保坂さんはシロちゃんに触ったことがない

15年間、保坂和志とシロちゃんの距離が縮まることはない。カレンダーはシロちゃんのご飯時間を記した文字でびっしりと埋められ、毎日、保坂和志の指先とシロちゃんの舌が触れ合うのだけれど、それ以上は決してない。その距離を保ちながらも生活はつづく。人間が忙しなく生きている間、猫はゆったりと時間を漂い、目を細め、陽を浴びる。そして、保坂和志もまた、「どうして?どうして?」と問う人たちに「どうして?なんて考えすぎなんだよ」と猫のように生活を急がない。

世界を説明するための入り口が、おれにとっては猫だから。猫がいるから花の美しさがあり、冬の寒さがありっていう。世界を感知する存在があるから世界が輝けるとか。猫の前にいると、何も考えなくていないという、そこはすごく大きな考えを教えてくれる。本当に。で、ただ、そういうふうに、猫というのはいろんなものをもたらしてくれる、というふうにいうと人には分かりやすいんだけれども、でも、何ももたらしてくれなかったとしても、非常に大いなるものがあるということまで猫は教えてくれる。

と保坂は話す。保坂家にはとても沢山の猫がいた。別れも沢山あった。でもシロちゃんは別れも想像できないほどに今までの子とちょっと違う。365日×15年。5475日でたったの2回。夜のご飯を食べにこなかったのはたったのそれだけである。他の猫は3日こないなんてことは普通にあった。でも、それなのにシロちゃんは確かな距離を保ち続ける。保坂和志は小説を手書きで仕上げ、合間にシロちゃんにご飯をやる。小さな日々を誠実に積み重ねる様子が心地よく映される。何にもないことで何かが描かれる。生活というのはそれだけであって、そういうであっていいのである。

あー、内田百間ノラや』でも読もう。

ノラや (中公文庫)

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すれ違う人

白線の上を丁寧に歩く

野良猫みたいに

さよーならあなた

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