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『テラスハウス』 TERRACE HOUSE BOYS×GIRLS NEXT DOOR

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最新の東京編2019-2020を最初に観たからか、テラスハウス初期作である本作のカメラワークが雑然としているように感じてしまうのだけれど*1、それだからこそ序盤が妙に生々しく映されている。第1話の不気味なエロさは何なのだろう。これから三浦大輔『愛の渦』が始まるんじゃないだろうか、というような気さえしてくるのが不思議だ。20話くらいまでは会話も何もない、ただ動作を映し続けるというようなシーンが多く、あくまでも記録することに注力しているからかもしれないのだけれど、役者が下手な芝居をしている映画を観ているようにも感じる。

個人的な湘南編でのベスト組み合わせは、菅谷哲也宮城大樹、今井洋介、住岡梨奈筧美和子永谷真絵。その中でも洋さんのことは本当に好きになってしまったなあ。ネットの誹謗中傷に激怒するシーンには洋さんの誠実なキャラクターのすべてが詰まっているんじゃないだろうか。正しいことを素直に、そのままに発する洋さんの姿を、僕はただただ美しいと思った。「テレビに出る決意をしたんだから、それはしょうがない」「そんなのをいちいち気にしていたら、仕方がないから無視しといたほうが良い」というような冷めた態度で、均されてしまった洋さんの熱。自分の個展を対決する場とするために打たれてしまったPCの文字が不適ではあるけれど、負の感情に対して真っ直ぐに向き合う洋さんの姿に途方もなく良い!と思ってしまった。あくまでも悪口を言っている人が悪いのであって、それに怒ってしまう人が咎められていることに、なんだかとても落胆してしまったのだがどうだろうか。テレンス・マリック『名もなき生涯』での主人公フランツが絶えず正しく訴えていた姿を、あの時の洋さんに重ねてしまったのだけれど、今や亡くなっているという。正しい心がこの世に存在し続けないというのはなんとも悲しいことであるなあ、と思ってしまう。

第57話だっただろうか。りなてぃが学祭に行くとOKAMOTO'S、BaseBallBearという個人的に最高すぎる対バンの看板が!それで終わりかと思いきや、しっかり話すシーンもあるという。最高でした。こいちゃんがこいちゃんのままに話す姿やOKAMOTO'Sの風貌に懐かしさが詰まっていて笑ってしまった。そうか7年前の映像作品を観ているんだ、というの実感した。しかし、その7年も前に発せられた歌声に簡単に泣きそうになってしまう。

“言葉にしたい”というメッセージはテラスハウスのテーマであると思う。言葉にしたいけど、できない。言葉にしたいから、考える。その言葉たちのどれもがリアルであるから本当に面白い。降り注ぐ雨だって本物なのだ。しかし、そうであるから言葉にできない人はとても苦しんでしまう*2

言葉にしたいんだ

できるならそうよ全部

正しさも間違いも

おそれずに伝えたい

ずっと楽しく観ていたのだが、最後らへんは本当に退屈であったし、つらかった。言葉によらない視線や空気がとても重く、やはり海に近い人間はこうなんだよなとでもいうような偏見が再燃してしまったのだが*3、そこでのてっちゃんの弱い者に寄り添った言葉に助けられた。テラスハウスで素晴らしい言葉を紡ぎ出せる人間になったのか!と、てっちゃんを大好きになってしまいました。そしてまた、言葉は人を救うために用いられるものなのだということを改めて提示してくれたテラスハウスはいいコンテンツだな、とそう思った。

 

*1:カメラの台数も少なそう

*2:もちろん言葉にできる人が苦しんでいないということではなく

*3:一階と二階の上下の配置は本当にしんどかった