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お笑いとテレビと映画と本と音楽とサッカーと…

GERA放送局「ラランドラジオ」

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 ラランドはアマチュアのプロフェッショナルである。これは矛盾しているのだけれど、ラランドを表現するにはまさにこれなのだ。金銭目当てではなく、純粋に何かを好きでやっていたらお金が貰えました、というのをラランドから感じてしまう。ラランドには絶妙なアマチュア視点があり、誰もが持てるこれがすごく好き*1という視点でいろんなことを肯定していく。そして、それをすべて正しく新鮮に感じる子どもに託すのが、ラランドっぽいと思ってしまう。M-1敗者復活戦でもやっていた芸能人に何者でもない子どもが遭遇するネタ。会話の中で、その芸能人がどんな人物なのかは見えてこない。むしろ一方的に話す子供の情報で満たされていく。芸能人よりも子どもの背景の方が見えてくるのは、何者でもない者などいないという、とても豊かな漫才だ。文春砲パンチや手が目の近くにきて危なかったり、ギャラを教えてくれるかわりに、好きな子のことを教えようとする子どもの自然さも素敵すぎて大好き。TBSラジオマイナビLaughter night」12月のチャンピオンになったネタでも子どもが出てくる。過酷な家庭環境にいる子どもがはじめてのおつかいをする途中で起こる普通ではないことに、ニシダがツッコむことで笑いが生まれる。どんなに苦しい出来事も笑いに変えてしまえばいいではないか、という実にお笑い芸人らしいネタである。子どものように、世界に興味津々な視点を持つのがラランドなのです。

 GERA放送局YouTubeチャンネルで配信されているラランドのラジオ番組を知っていますか?これが凄く面白い。ラランドは港区OL・さーやと25歳で大学3年生・ニシダのお笑いコンビ。事務所に入らずフリーで活動している2人は、何にも縛られていないのは素晴らしいという挨拶で初回をスタートする。港区OLだって、留年していまだに大学3年生だって、お笑い芸人をやったっていいのだと。

(さーや)

ラランドのメイクをしていないほうの、さーやです。

そして、ノーメイクの…

(ニシダ)

ニシダです!でも、もう男もメイクをする時代。

そうでしょ?ね?

(さーや)

全員を肯定して始まりたいと思います。

(ニシダ)

多様性です。

アカペラサークル新歓*2のキラキラに敗れ、お笑いサークルでコンビを組んだ2人は、大学時代、彼女がスマートフォンになってしまうというネタでビルを揺らしたというエピソードを持ち、アマチュアだけれど、趣味じゃないよとM-1で準決勝に進出した実力をラジオでも発揮している。やはり漫才同様、アマチュアさがここでも展開されていく。ニシダのスーパーマラドーナに“さん”をつけず、武智を“でかヤンキー”、ギャロップ林を“ギャロップのハゲ”と言う大学生ノリや金属バットや和牛にときめく素人視点。ただただお笑いが大好きなんですという2人の会話のミーハーさや第10回でのニシダの半径5メートルの内輪話。けれどM-1の準決勝に進出したラランドの見ているものは全てが本物である。この見ているものが本物であるという説得力と2人から語られるアマチュアのズレが絶妙に面白い。さーやが演じる子どもは「はじめくんコーナー」で登場し、ガキがニシダを振り回すという漫才でのそれを聴くことができるので最高だ。第1回の単独ライブも成功させ、子どもの成長という絶対に巻き戻せないラランドの行方を「ラランドラジオ」で聴いていけます。おすすめです。

 

*1:誰もが持てるけどすごく難しい

*2:ニシダのアカペラサークルでの「ボンボン」の発声エピソードがめちゃくちゃ面白い。第1回で「声が良いね」とアカペラサークルに連れて行かれたと話していたのが、第10回で「本当は女子のニットにつられた」に変わるのが面白い