あなたが嘘をつかなくても
生きていけますようにと
何回も何千回も 願っているのよ
(よるのあと)
adieuが歌い、そして願うのは美しいセカイだ。空まで伸びた街路樹と雲の隙間を眺めながら、雨に夜道が光るバス停を思い返す。青空に落ち葉が舞い、シャツの裾がゆれる。さまざまなものが混在する世の中で、美しい部分にだけ目を凝らす彼女が漠然とした美しいセカイを描いてゆく。淡い光の中で不確かな感覚や事象、気持ち、セカイ、“あなた”が佇んでいることに少しずつ丁寧に触れていく。そして“自分”の色を探すのだ。
あたりまえのことだが、人はそれぞれ違う。それだから、同じ色を見ていても少しずつ違う。わかっていることなのに、人は同じものを見ようとする。人は同じものを見ている方が安心するし、その方が楽だ。もしかしたらみんなが他人の心を慮って、自分を抑えることは美しいのかもしれない。しかし、adieuが描く美しいセカイは、嘘をつかないで自分の色は他のどれとも違うと願うものだ。
どんな昨日より 明日が好きだと
少しの背伸びと本音で 今は言えるよ
はじめまして「さようなら」
最初で最後の「さようなら」
理由ばっかり 尋ねる世界で
あなたの理由だけを持って逃げた
正しい夢の 終わり方なんて
この世でわたし わたしだけが決める
(ナラタージュ)
人生は美しくないもので溢れている。悲しくつらい傷も増えていくのだろう。けれど、adieuを聴いているときは不安や恐れを排して、ただ美しいセカイ、“希望”だけを見つめていたい。
今日も
この世界で
ひとりつまずいて
増えていく傷を
嗚呼
あなただけはいつか
勲章に変わると言った
真実でありますように
(蒼)