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水橋文美江『#リモラブ 〜普通の恋は邪道〜』最終回

f:id:You1999:20210506024844j:image『リモラブ』が終わってしまった。画面にニヤニヤ言葉を打ち込むキュートな美々先生と青林を観れなくなるのは大変残念であります。しかし、第10話、そんな2人は双子座流星群を見上げながらも違うことを考え、モヤモヤとした感情を浮かべ、帰路につく。美々が檸檬2との やりとりをしていたことを青林は問い詰める。画面に積み重なるクローズドな草モチと檸檬の会話であれば、それ以外他には何もなくて、相手だけを見つめられていた。それが現実となるとなんだか思うようにいかない。わかりあえない。四角形のスクリーンの外側には何が何だかわからないほどにたくさんのもので溢れていて複雑。そして、人間というもの、その関わり合いというものはもっともっと複雑であって、わかりあえない。

美々「私今ちゃんとわかりあえるまで話そうとしてた。わかり合わなきゃって思ってたんだよ」

青林「いや僕だってわかりあいたいと思ってるよ。“ごまかす”って何でそんな言い方?もっとわかりたくて、もっと近づきたくて、それじゃダメ?キャベツとかステーキとか、いや、もうよくわかんないけど。それでも何とかわかろうと、わかりたくて、でも全然わからなくて、これじゃあわかりあえないというか…」

美々「私だってわかりたくて、でも全然わかりあえてない…」

青林「わかりあえてない…?」

美々「わかりあえてない…?」

画面の中で言葉を送り合っていた草モチと檸檬であったときは、あれほど互いを近くに感じ、分かり合えていたような気がするのだけれど、顔の表情や身体的な接触によって、情報が増えれば増えるほど、むしろなんだか分かり合えなくなってくるという人間の不思議に困惑する美々は、かつてのやり取りをスクロールして、草モチと檸檬の会話のリズムを思い出す。「一生わかりあえないんじゃないか」とため息をつく美々に富近先生は言う。

わかりあえないなら、わかりあえなくていいじゃない。人ってそんな簡単にわかりあえるものじゃないんだし。わからないならわからないままでもいいんだよ。わかろうとしたことが大事なんであってさ

感染症対策として必死に社内で対応していた美々に、そんな過度な対策はバカげていると指さす人がいたかもしれない。しかし、美々には1129人の社員を守るために精一杯のことをしていたのであり、そのわかりあえなさだけが心に沈澱する。でも、きっとこれはこのご時世に大切なことなのだと、わかってくれようとした人もいたであろう。その微かな思いやりとつながりがあるために世界はなんとか保たれている。顔も名前も知らない、どこの誰だかわからない人とのチャットが美々の心を救ったように。

私にはないから好き

わからないから好き

美々も青林もわかりあえることはできないかもしれない。世界も本当のところでわかりあえることはできないのかもしれない。誰もがマスクをしているように、画面上には無数の知らない誰かが、わかりあえなさが存在している。でも、きっとそうであるから私たちは誰かを好きになれる。