昨日の今日

KINOUNOKYOU

お笑いとテレビと映画と本と音楽とサッカーと…

年末のこと。

f:id:You1999:20211230014742j:image9:50に起きて、10:00に家を出た。20分遅刻して友達の車に「すみません…」と言いながら後部座席に乗り込んだら、まだもうひとり来ていなかった。「なんだ最後かと思ってたよ」とシートベルトをした。「Kは寝坊ってLINEきてた」と言って、Mはエンジンをかけた。車はゆっくりと動き出して右折した。そして、だんだんとスピードをあげていき、窓からは冷たい風が入ってくる。寒い。それでも昨日よりは日差しもあって暖かい日だった。僕は隣に座っているNに「海外サッカーの前半戦ベストイレブンやろうよ」と提案して、ウイイレのアプリを起動することを促した。僕のベストイレブンは「ラムズデール、カンセロ、マガリャインス、ミリトン、冨安、ロドリ、ベルナウド・シウヴァ、モドリッチ、ヴィニシウス、ラカゼット、サラー」で、Nは「デ・ヘア、カンセロ、アラバ、ルーベン・ディアス、リース・ジェイムス、ベルナウド・シウヴァ、ロドリ、マウント、ヴィニシウス、ベンゼマ、サラー」だった。「今シーズンのベルナウド・シウヴァはマジでヤバいよね。運動量もフィニッシュも抜群だし。サラーはちょっとありえないドリブルするしね。ベンゼマかラカゼット迷ったわ」などと話していたら、「あー、ついにやってしまいましたああああ」とKが車内に転がり込んできた。「寝坊しちまったよおおおおお」少しの遅れはあるにしてもKが1時間近く遅れるのは初めてだった。僕はいつも10〜20分くらい遅れてしまう。残念です。

しばらく道なりに進んだあと、車はガソリンスタンドに止まった。Mがガソリン入れているのを車内から3人で見る。

「俺さ、やっぱりなんだか爆発しちゃうんじゃないかって思っちゃうんだよね、ガソリンスタンドいるとさ」
「ボカンって?漏れてたりとかして?」
「いや、むしろ安全なんですよ、っていうふうになってるのとかもわかるんだけどさ」
「うん、なんかわかる気がする」
「てかさ、このガソリン入れたからなんなんだよとかも良くわかってないわ。どうやって走ってんだよ、車」
「ね」

よくわからないのだけれど、体力が回復した車は良く走ったような気がする。まだ時間があったので、アウトレットモールに行った。駐車場が4階までいっぱいだったので5階までぐるぐる回りながら上がっていく。空いているところを見つけると後ろを振り返りながらMはスムーズに車を停めた。ゆっくりと慎重に正確に線の中に収まってきく車の動きを感じながら、僕にはできないなあと思った。「ありがとーです」と言ってみんなで寒い外に出た。寒い。「冬ってさ、寒いよな」「寒いよ、当たり前じゃん」「いや、でもさ、冬ってこんな寒かったっけ?て思わない?」「うん、わかる、寒いよね」「そう、冬は寒いんだよ」

時間を潰すために来たので、特に買うつもりもなく、店に入ってはすぐに出るみたいなことを繰り返し、服の値札を隠して遊んだりした。

「これ、何円でしょう」
「んー、3,000円」
「4,200」
「正解は…32,000でした!」
「は?ないわ、それは」
「それはおかしい」

というようなことをやっていた。Kが「鼻水止まらん」と言ってマツモトキヨシティッシュを買ったのだけれど、買った途端に鼻水は止まったらしい。「安心でじゃない?」「ティッシュがあるってことの?」「そう」

ラーメンをさっさと食べて目的地に向かう。細麺。ラーメン屋から車は40分くらい走った。『お菓子の工房 エミール』に着いた。f:id:You1999:20211231032219j:image今日の目的地。外観を見た時にもうちょっと感動するかと思っていたのだけれど、おーここかーと思うくらいだった。『オードリーANN』を聴いていないMとKは何も思わなかったかもしれない。連れてきてくれてありがとう。オードリー春日家御用達のシュークリームを買った。ケーキを取りに来ているお客さんがちらほらいた。クリスマスは終わってるから誰かの誕生日なのだろうか。年末だからケーキを買うのだろうか。とにかく食べたいからケーキを買うのだろうか。まあ、何にしてもケーキを買っているのだから、そこには幸福があるのですね。

ケーキ、という言葉の喚起する、甘くささやかな幸福のイメージ。大切なのはそれであって、それは、具体的な一個のケーキとは、いっそ無関係といっていい。何が好きですか、と訊かれて、まよわず、ケーキ、とこたえるような単純さで、私は生きたい

江國香織『とるにたらないもの』

シュークリームは食べたのか食べてないのかわからないほどにあっという間に食べ終えてしまって、遠くの木に石を当てるゲームが始まった。外した人は“死ぬ”というあまりに過酷なデスゲーム。木の幹に向けて放った石はクルクルと弧を描いて、当たることなく横に外れていった。僕は1発で外して死んだ。「はい、終わり、死んだね」「死んだわ」

そんなことをしていたらすぐに暗くなっていく。車の中で「夜どーしよか」と話していたら、さらに真っ暗になっていった。そんな暗闇を見つめながら、「なんかさー切ないよなー」と話した。最近、集まると切ないよねっていう話になってしまう。つらいのではなく切ない。じんわりとした何か。

「年末の感じさ、なんか切なくない?寂しくない?終わるし、暗いし、寒いしさ、なんか寂しくならない?」
「うん、わかるよ」
「えっ!わかるの?そうだよね!!」
「寂しいよ、暗くなるの早いしさ、冬」
「ね!そうだよね!まだ明るいうちに建物に入って、何時間か経って外に出るともう真っ暗なの、寂しいよね!わかるよね!」
「うん、わかるよ」

みんな切なく寂しい気持ちになっているらしいということがわかった。あのちゃんも「年末の鬱感異常」とツイートしていたし。みんなで話した結果、暗くなるのが良くないということになった。だから、暗くなったら寝よう。起きていても良いことないし、早寝早起き大切。日光を浴びよう。そういうことになった。角幡唯介『極夜行』を読んで、なんだか微妙だなと思っていたけれど、暗闇の中で何日も過ごしていたの尊敬だな。反省。素晴らしい本です。

「なんかさ、こうやって違う県にきて人が生活してるのとかさ、ケーキを買ってたりさ、そういうの不思議だなあって思っちゃうよね。それでさ、『PRODUCE 101 JAPAN SEASON2』とか観てるとね、長野とか、愛媛、鹿児島、東京、福岡とかさ、いろんなとこから集まってきて協力して歌って踊ったりしてるんだよなあ、なんかそういうの感動しちゃうよなあ」
「まあ、当たり前じゃん」
「いやーそうなんだけどさ」
「わかるけどね」
「わかるでしよ」
スピードワゴン小沢みたいになるな」

「すごいと思わない?潤」みたいな感じで当たり前のことをそれっぽくいうスピードワゴン小沢ゲームをしながら次の目的地に向けてエンジンがかけられる。「街中を歩いているときにさ、周りの人をみて、あーこのひとは40年間生きたのかとかさ、60年間生きてきたのかーと思うよね。」「俺らもさ、30くらいで死ぬ可能性あるわけだよね?」「うん、あるよ」「だよなあ」