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OKAMOTO KOKI Acoustic Tour 2022 『GIRL&時のぬけがら (Naked)』

f:id:You1999:20221028150514j:image2020年にコロナ禍のために中止になってしまったオカモトコウキによるソロアコースティックツアー2年越しのリベンジ、OKAMOTO KOKI Acoustic Tour 2022 『GIRL&時のぬけがら (Naked)』まほろ座MACHIDA公演に参加してきた。コロナ禍前の『GIRL』とコロナ禍後の『時のぬけがら』を携えての、オカモトコウキのホームタウン町田での開催だ。100人ほどのキャパで見れるのがとても嬉しいし、前回のオカモトコウキ『1stソロライブ』はBeats渋谷でキャパ700人ほどだったので*1、今回はさらにグッと近い。なんほりライトを持って、開演を待つ…というのが理想的なはずなのだけれど誤って忘れてしまった。残念です。オカモトコウキはなんといっても抜群にかわいい。そのせいかどうかはわからないのだけれど、会場にはご婦人が多い印象を受けました。素敵ですね。

ライブのオープニングを飾る楽曲は、『時のぬけがら』オープニングナンバーでもある『Time』。タイトルの通り、この楽曲は時間についての音楽であり、カルロ・ロヴェッリ『時間は存在しない』のように、直線的な時間の流れではなく、「時間はそう 常に同時並行で」あることについて思考しながら歌われている。喪失感を感じていながら、でもここに君はいるはずなんだと呟く。そして、今があるだけのこの世界で君を待ち続けよう、踊り続けようと『WORLD SONG』、誰もがこの世界に紛れる群衆ではないのだと『エキストラ』で、

誰にも聞こえないと思っているこの声
実は聞こえてたとしたら
どれだけ安らぐか
誰もが同じ日 同じ夜にいる

と時間を共有するすべての人に語りかける。『時のぬけがら』を経たオカモトコウキにとって、「同じ日 同じ夜」は過去も未来も内包しているのだろう。そんな時間というものが不確かなように、そこに存在する無数人々も何もかもが不確かで互いに分かり合えないのだけれど、その不確かなままで、孤独なままで繋がることはできないのだろうか…と暗闇の部屋に差し込む月の光のような微かな希望だけを見つめているシーンをポップに歌いあげてしまうのが印象的だ。

「町田へようこそ!」とMCを開始し、「ほとんど神奈川なので東京出身と言いづらい…」と苦笑してみせる姿はめちゃキュート。ほんとにね、かわいいのだ。「このまほろ座の“まほろ”って三浦しをんまほろ駅前多田便利軒』からきてるのかな?この“まほろ”って町田のことなんですよ。で、設定として、東京で流行したものが1番最後にやってくるということになってるんだけど、それはね、事実です」と笑いを誘っていた。

「もう10年以上も前の曲です」と、恋人がいない夜の喪失感に耐えられずに電話をかけてしまう『Telephone Telephone』を演奏。この楽曲もまた今回のライブに即した“時間について”のものであるといえる。

くだらないケンカのせいで
長い夜は さらに長くて
電話が鳴って 胸高鳴って
途端に夜は短くなる

時間というものは一定ではなく、相対的であることを恋人2人が夜に通話するシーンによって描写してみせている。「かわいい曲、歌詞ですね」と照れていたオカモトコウキの姿が10年を経たことを物語っているかもしれない。「今日、32歳の誕生日なんですよ、言い訳できないくらい大人になってしまいました」と話していた。

「コロナ禍で失ったものはほとんど取り戻せたんじゃないかな、と。OKAMOTO'Sでツアーもしたし、アルバムも出せた。でも、このアコースティックツアーだけはできていなかったんですよ。それがようやくできるようになって嬉しい!」と語り、2年前にソロライブツアーのために買った機材を見るたびに、「あっ、まだできてないな…」と思うことがつらかった、というエピソードも明かしてくれた。

2年前に募集したカヴァーしてほしい楽曲たちを各会場で違うものを演奏していこうかなと、まほろ座MACHIDAでは、小沢健二『いちょう並木のセレナーデ』をセレクト。オカモトコウキ小沢健二!を歌うことに胸が高鳴ってしまった。贅沢な時間である。ここで、OKAMOTO'Sサポートもしているブライアン新世界が登場。「1部(お昼公演)は大丈夫かってくらいガチガチでヤバかったけど、2部はいい感じだよね?」とオカモトコウキが尋ねると、ブライアンが「いい感じだよ!」と返す。珠玉のポップチューン『LETTER』、未発表曲の『Back to 70's』を披露し、そして、ブライアンがプロデューサーをつとめるユニットLafuzinから田村美果が招かれ、オカモトコウキが提供した楽曲『ランチタイム・ラブ』で鮮やかで楽しげな空間を作り上げる。

時間の直線的な進行としかし頭の中にある記憶が接続することによって簡単に時間の矢印は変化することを歌った『folk』、ゆっくりと煙のように消えていく記憶と確かに残る思い出についての『smoke』、時間とともに消え去るのかもしれないのだけれど、たしかに胸の奥にはあのときの音楽が流れているだろうという『君は幻』がつづていく。「バンドのギターがこうして10年を経てから、ソロでアルバム出したりするのって結構珍しいと思うんですよ」と話し、「来年に出すOKAMOTO'Sのアルバムから無断で演奏します!」と『Flowers』を特別に披露してくれた。

『いつもこんな』『未来で会いましょう』と1stアルバム『GIRL』からの楽曲で会場の手拍子を要請しヴォルテージを高めていく。そして、「ソロライブでこれはやらなきゃ」と『なんかホーリー』へ!『なんホリ』のなんとも凄まじい幸福感はなんなのだろうと考えてしまうほどに、あまりに楽しすぎる楽曲だなあ、と感嘆しうっとりしてしまう。なんホリライトの煌めきがその幸福感をより印象的にさせていく。客席からサッとなんホリライトが掲げられ、曲が終わるとライトを消してちゃんと鞄にしまうアクションに、民度の高さというか教育が行き届いているというのかなんというか、流石だな笑と思ってしまいました。曲間なく、立て続けに『WENDY』で駆け抜けていく。「今日はありがとうございました!」と『I GOT LOVE』で「君は覚えてる?」とすべての人の心に響きつづける音楽の素晴らしさを届けステージを本編を終え去っていった。

アンコールの拍手に応えて、MACHIDA Tシャツに着替えてステージに戻ってきたオカモトコウキに、ブライアンの「Happy Birthday to You」のサプライズ歌唱が送られ、田村美果がケーキを運んでくる。

Beats渋谷以来の3年ぶりのお誕生日をお祝いできたので嬉しい。

「神奈川から川を挟んで反対側にある東京のラブホテル群を眺めながら、Everybody dancing time 欲望は止まらないという歌詞を思いついた」というエピソードを話し、アンコールとして『90'S TOKYO BOYS』をオカモトコウキver.のやさしさをこめて歌われる。なんと最高な夜なのだもうっとりしました。OKAMOTO'Sのライブにもちゃんと行かなくちゃだ。f:id:nayo422:20221106222832j:image

*1:コロナ禍前だったことを考えると、本当にずーっと昔のことのように思えてしまう。そして、そのライブも11/5でオカモトコウキの誕生日であった